甲状腺内視鏡サージセンター
甲状腺は、のど仏の下にある臓器です。代謝を調節する甲状腺ホルモンを分泌し、体温や自律神経を調整するという大切な役割を担っています。
その甲状腺の疾患に対して従来行われていた外切開手術は、頸部の人目に付く場所に手術痕が残る美容上の問題がありました。
当院では内視鏡を使用した内視鏡補助下甲状腺手術(VANS法)を導入しています。
この手術は、頸部以外の普段は見えにくい箇所に小さな傷しか残さずに治療することが可能です。
疾患の種類、大きさ、また患者さんの希望を考慮し術式を選択しています。甲状腺疾患の手術でお悩みの方は、耳鼻咽喉科へご相談ください。
受診案内
耳鼻咽喉科において頭頸部・甲状腺外科外来(火、木、第4土曜日)を行っています。
内視鏡補助下甲状腺手術(VANS法)
甲状腺疾患は若年女性に多く、従来の前頸部を切開する外切開手術では傷跡が目立つため、精神的な負担になったり、整容性の面で手術に踏みきれない要因となっていました。一方、内視鏡を用い目立たない位置に小切開で施行できるのが内視鏡補助下甲状腺手術(VANS法)になります。
外切開手術とVANS法の比較
外切開手術 | VANS法 | |
---|---|---|
入院期間 | いずれも術後5~6日程度 | |
手術時間 | 1.5~2時間 | 2.5~3時間 |
長 所 | 手術時間が短い。 | 頸部(首)に手術痕が残らない。 |
短 所 | 頸部(首)の手術痕が残る。 | 手術時間がやや長い。術後に頸部(首)違和感が生じやすい。※数か月で解消することがほとんどです。 |
その他 | 手術の安全性や確実性は同程度です。 | |
切開位置(例) |
手術が必要な場合がある甲状腺疾患について
手術が必要な場合がある甲状腺疾患としては、良性腫瘍や悪性腫瘍(がん)、甲状腺ホルモンを過剰に分泌するバセドウ病で薬剤による治療でコントロールが難しいケースなどが挙げられます。
VANS法の適応
当院における内視鏡手術の適応は以下の通りです。
良性腫瘍
最大径6㎝以下
悪性腫瘍
最大径4㎝以下で周囲組織の巻き込みがない状態かつリンパ節に転移がない(あっても最小限)
バセドウ病
質量推定60g以下
良性のほぼ全てが内視鏡手術が可能です。ただし、高齢者や合併症を有する症例には外切開手術を優先します。
VANS法
VANS法の皮膚切開位置
甲状腺内視鏡手術における皮膚の切開位置は、経口腔アプローチ、鎖骨下アプローチ、腋窩アプローチ等、複数のアプローチ法があります。
鎖骨下アプローチによるVANS法は、鎖骨のすぐ下に鎖骨下に30mm程度の皮膚切開を行い、内視鏡を挿入するため側頸部に5mmほどのわずかな切開を行うだけで施行できます。
創痕が小さいうえに、通常の着衣によって隠れる位置のため、整容性を大きく損なわずに手術が可能です。また、VANS法には、さまざまな甲状腺疾患に対応可能であることや、切開創から術野までの距離が近く、用手的操作(手指で直接触れて行う手技)の併用が可能であることから、安全性が高いなどのメリットがります。