定位放射線外科センター
定位放射線外科センターのご案内
定位放射線手術とは癌などの病変を放射線でピンポイント照射し破壊する低侵襲性かつ有効な治療法です。
当院では2004年9月より、強度変調型定位放射線治療装置リニアック(ノバリス)の日本第1号機の稼動を開始し、1997年に北信越で最初に導入したガンマナイフとあわせて全身の病変に対応できる定位放射線外科センターを開設いたしました。
リニアックとガンマナイフの両者を当院では有しており、当センターでは両者の特性を生かし疾患に合わせて使い分けをし、最適な治療を提供することが可能です。
当センターでは両者の特性を生かし症状に合わせて使い分けることによって、定位脳放射線手術が可能です。
既に日本ではガンマナイフが脳神経外科領域で開頭手術を上回る治療効果を示していますが、欧米ではリニアックによってガンマナイフでは困難とされる直径3㎝以上の頭蓋内病変のみならず、頭蓋外・体幹部疾患の治療にも卓越した効果が実証されており、患者さんにとって治療における選択肢が広がっています。体への負担が少なく、より安全な治療が要求される中で、定位放射線手術の重要性は今後更に高まることでしょう。
我々はこれまでのガンマナイフでの治療経験を生かして、放射線メス・リニアックで頭頚部病変はもちろん前立腺癌、肺癌や脊椎病変などに対し、手術に劣らない治療効果が期待される体幹部定位放射線手術の確立を目指しています。
ガンマナイフの定位放射線手術
ガンマナイフとは
開頭手術を行わずに外から放射線を必要な部位にのみ集中して照射することで、頭の病変を治療する画期的な装置です。身体にメスを入れることなく、しかし治療後は、まるでナイフでも使ったかのように切れ味鋭く病変が切り取られている。それがガンマナイフです。世界中の国々で数十年にわたる治療経験と追跡調査によって、ガンマナイフの有効性と安全性は比類なきものとされています。
脳神経外科 光田幸彦医師のインタビュー掲載中!!
1997年7月、当センターに日本国内で17台目、北信越地方(石川、富山、福井、長野、新潟)では第1号機として導入されました。現在までに治療数は 6800例(2021年11月現在)を超えており、良好な治療成績を得ております。 患者さんの体への負担が少なく、安全な治療が要求される中で、ガンマナイフはいまや脳神経外科領域において必要不可欠な存在といえるでしょう。
スウェーデンで開発されたガンマナイフは、脳腫瘍などの頭蓋内病変専用の定位放射線手術装置です。
直径3㎝以下の頭蓋内病変に対しては、治療精度、機能、実績ともに世界最高と評価され、200台以上が世界各地で稼動しています。体に負担をかけることなく、2~3日の入院で治療が完了し、従来の開頭手術と同様な効果を得ることができます。
-
ガンマナイフパーフェクション
2018年10月にバージョンアップしたガンマナイフパーフェクションは従来機種と比べて、1回の照射で治療できる範囲が大幅に拡大しました。今まで数回に分けて照射していた症例でも、1回の治療で対応ができるようになり、治療時間の短縮につながります。
また、ガンマナイフパーフェクションはフルオートマティックなので、患者さんがベッドで安静にしている間に治療は終了します。
ガンマナイフのしくみ
本体には201個のコバルト線源が半球状に位置しており、個々の線源から出されるビームは、ヘルメットの中心で1点に集中し、効果を発揮するようになっています。MRI(核磁気共鳴装置)、CT(コンピュータ断層装置)、脳血管撮影などの画像から病変の位置をコンピュータで計算し、ヘルメットの中心にくるように位置決めを行い、照射します。放射線が散乱しないよう内部に遮蔽(しゃへい)構造をもっていますので、患者さんや治療スタッフは安心して治療に専念出来ます。照射誤差は1㎜以下であり、周辺の正常脳に与える影響は極めて軽微な体に優しい治療法です。
ガンマナイフ手術の流れ
患者さんの病気にガンマナイフ手術が有効であるかどうか、適切な治療の時期などを十分検討した上で、治療日を決定します。入院期間は基本的には3日間です。退院後はすぐに通常の生活に戻っていただけます。
-
1日目 入院
午前10時頃までに、当院2階 脳神経センター外来へお越しください。
術前検査、治療のオリエンテーションを行います。
-
2日目 ガンマナイフ手術
フレームの装着
頭皮の4ヶ所に局所麻酔を行い、治療用フレームを4本のピンで頭部に固定します。その後、MRI、CT、脳血管撮影などを行います。
線量計画作成
撮影終了後は病室にて休息していただきます。この間、撮影された画像をもとに、コンピュータを用いて病巣の位置を決定し、精密な線量計画を立てます。
病変への照射
治療台に頭部を固定します。自動的にベッドが移動し、頭部が装置に入ると治療開始です。照射は数回繰り返して行いますが、全く痛みは伴いません。
治療全体にかかる時間は平均して3時間程度です。
-
3日目 退院
以降、3~6か月ごとに経過観察を行います。
ガンマナイフの適応手術症例
従来の外科治療では不可能と考えられてきた脳深部の腫瘍や動静脈奇形の治療のみならず、手術で切除困難な病巣や多発性病変、再発例にも効果を発揮します。
身体への負担が極めて少ないので、高齢者や合併症のために外科治療に耐えられない患者さんの治療も可能となりました。
症例の内訳
当院ガンマナイフ手術症例総数:6800例(2021年11月現在)
1997年のガンマナイフ導入以来、6800例を超える症例を治療しています。
代表的な適応
転移性脳腫瘍 |
原発巣の種類に関係なく有効 |
---|---|
良性脳腫瘍 |
神経鞘腫/髄膜腫/下垂体腺腫/頭蓋咽頭腫/良性神経膠腫 |
悪性脳腫瘍 |
悪性神経膠腫/悪性リンパ腫/髄芽腫/その他 |
血管奇形 |
脳動静脈奇形/海綿状血管腫 |
機能的疾患 |
三叉神経痛/難治性てんかん/癌性疼痛 |
-
転移性脳腫瘍のガンマナイフ手術
単発のみならず、複数個の脳転移にも驚くべき威力を発揮し、手足の麻痺や言語障害の改善も期待されます。新しい転移が出現しても、その都度、追加治療が可能で、癌患者さんの生活の質の改善に寄与します。
治療効果
腫瘍は急速に縮小し、治療1年後でのコントロール率は80~90%です。
治療により患者さんのQOL(生活の質)が改善されます。
-
聴神経腫瘍(神経鞘腫)のガンマナイフ手術
ガンマ線照射により腫瘍は壊死を起こし、徐々に縮小します。90%以上の症例で腫瘍は完全にコントロールされ、聴力の温存率は70%、開頭手術で問題となる顔面神経麻痺の合併はほとんど認めません。
治療効果
95%の症例に腫瘍抑制効果を認め、腫瘍の増大は5%にすぎません。70%に聴力の温存が期待されます。
開頭術に伴う顔面神経麻痺は、ガンマナイフでは通常出現しません。
-
脳動静脈奇形のガンマナイフ手術
年間3~4%の頻度で脳出血、くも膜下出血を引き起こす危険な病気で、てんかんの原因にもなります。ガンマナイフ手術数か月後より動静脈奇形の閉塞が進行し、2~3年の経過で消失します。
治療効果
数か月で閉塞が進み直径3㎝以下の場合、治療3年後の完全閉塞率は80%以上になります。
治療後3年の時点で病変が残存する場合は追加治療を検討します。
-
三叉神経痛のガンマナイフ手術
典型的な三叉神経痛の場合、約90%で除痛効果が得られます。特に高齢者や手術後に痛みが再発した患者さんには良い治療法です。三叉神経が脳幹に入る部位(赤丸で示す)を照射します。
治療効果
有効率は約90%で、特に高齢者に適する治療法です。
ガンマナイフ手術時の入院案内
入院時の治療費について
自己負担割合3割の方
約20万円
自己負担割合1割の方
約6~7万円
※お見積もりですので、多少上下することがございます。
※入院時個室をご希望の方はお申し出ください。
※「高額療養費制度」がご利用いただけます。手続きが必要となりますのでお問い合わせください。
入院時にご用意いただく物
健康保険証、印鑑、診察券、医療受給者証(お持ちの方のみ)
診療情報提供書(紹介状)、CD-Rなど(紹介医から預かった場合のみ)
現在服用中の薬及びサプリメントなど
洗面・シャワー・洗髪・食事用品、パジャマ、下着、スリッパ、ティッシュなど
病衣とタオルのセットの貸し出しシステムがあります。
入院中のお食事・お薬について
治療当日の午前9時以降は、水分、食事ともに中止とさせていただきます。
持参薬については、通常どおり服用してください。
なお、糖尿病の内服薬につきましては、こちらからの指示に従ってください。
リニアック(VersaHD)の定位放射線治療
全身の病変に対して超高精度の定位照射を行い、体の負担と合併症の少ない放射線治療を実現します。
リニアックって何のこと?
リニアックは、ガンマナイフ同様、エックス線というメスを用いて病変を治療する定位放射線手術専用に開発された世界最高の強度変調型リニアックです。
ドイツのブレイン・ラボ社が開発した最新鋭機で、頭蓋内の病変のみならず頭蓋外病変にも卓越した効果が実証され、欧米を中心にUCLA、クリーブランドクリニックなどのトップレベルの医療センターに約60台が導入されています(2005年2月)。
当院では、2004年9月にリニアック日本第1号機となるノバリスを導入し、2024年5月からはVersaHDの稼動を開始しています。
リニアック(VersaHD)の主な特徴
照射野40cm×40cmで大きな腫瘍や数個の腫瘍に対応(乳がん術後照射にも対応、下記DIBH参照)
フルフィールド5mm幅リーフ
仮想1mmのリーフにより小さなターゲットにも対応
高線量率モードにより治療時間を大幅に短縮
kVによるCTイメージにより腫瘍または体内臓器にて位置合わせが可能
VMAT(強度変調回転照射)/IMRT(強度変調放射線治療)が可能
高精度6軸補正天板(治療台)
リニアック(VersaHD)治療の6つのステップ
治療は各疾患別の専門医、放射線治療医、医学物理士、放射線専任技師のチームで行います。
治療中は痛みを伴うことはなく、一般の放射線治療のような頭部の脱毛や脱力、食欲不振などの副作用はほとんどありません。通常は退院後すぐにふつうの生活に戻れます。
入院期間について
腫瘍が小さく1回照射で行う場合
5日間(頭部・頚部の腫瘍の場合)
腫瘍が大きく分割照射が必要な場合
1~2週間
治療の流れ
-
1 診察
専門の医師が診察して、病気の程度に応じて治療の適応や方針を決定します。受診の際は、患者さんの主治医の紹介状、MRI、CTなどの画像が必要です。
-
2 固定具の作製
高精度の定位放射線照射を行うためには、治療時の体の固定が重要です。
治療に際し、患者さん自身の頭部や体に合わせたマスクやシェルを作製します。
作製には痛みを伴わず20分程度で終わりますが、その間は動かないでください
-
3 CT撮影
固定具をつけた状態で、CT撮影を行います。通常はヨード剤の点滴を行いますので、過敏症のある方は申し出てください。
-
4 治療計画の作成と検証
CTやMRの画像診断をコンピュータに取り込み、治療医が適切な治療計画を作成します。
当センターでは治療の精度と安全の確保のために、医学物理士が全例、治療計画の精度検証を行います。
精度検証には1症例あたり3時間前後を要しますので、治療計画の作成と検証のために十分な時間を頂き、照射はCT撮影後2、3日後から開始します。
場合によっては一旦退院し、治療開始日に再入院していただくこともあります。 精度検証の行わないリニアックの定位放射線照射は信頼性に欠け、誤照射の可能性があります
欧米では医学物理士による精度検証が義務付けられています。
-
5 治療開始
頭部はマスクシステムで、体幹部ではシェルで固定し、放射線照射を行います。
最新鋭の赤外線追跡システム、X線照射装置で患者さんの体位を確認し、コンピュータ制御の治療台が適切な照射位置に移動します。(誤差1㎜以下の精度
1回の治療は20~30分で終了し痛みを伴うことはありません。1日1回の照射で、治療期間は照射回数によって決まります。なお、希望に応じて外来治療も可能です。
-
6 経過観察
全身状態にはほとんど影響を与えませんので、退院後より入院前の生活に戻れます。その後は担当医の定期健診が必要です。
リニアックの適応治療症例
当院リニアック治療症例総数:4400例(2021年11月現在)
-
頭蓋内疾患におけるリニアック治療
リニアックによって頭蓋内疾患に対する治療範囲が以下の如く拡大されました
ガンマナイフでは治療困難な脳表・小脳外側・延髄下方の病変 |
|
---|---|
直径3.0㎝以上の大きな病変 |
神経膠腫/転移性脳腫瘍/髄膜腫瘍 他 |
視神経に接している病変 |
頭蓋咽頭腫/下垂体腺腫 他 |
-
頭蓋外疾患におけるリニアック治療
ガンマナイフ治療域外の鼻咽喉部・眼窩・頚部・頚椎の病変でも高精度の1回照射、分割照射を容易に行うことが可能です。
-
体幹部疾患におけるリニアック治療
赤外線追跡システムとX線照射装置を併せ持つBodyにより、従来の機器では困難な体幹部の位置決めのプロセスが自動化され、体幹部定位照射の治療時間の大幅な短縮と高精度化に成功しました。
現時点では、前立腺癌、脊椎・脊髄腫瘍などが最も良い適応です。
肺癌、肝癌に対する定位放射線治療も欧米では良い結果が報告されており、当センターでも適切な症例を選んで治療を行っています。
受診方法について
-
ガンマナイフ手術を希望される方
ガンマナイフは直径3.0㎝以下の脳腫瘍などの頭蓋内病変に対して、開頭手術と同様の手術効果が期待され、かつ副作用、体の負担が極めて少ない最先端の治療法です。
病変の種類、大きさ、部位によって、開頭術とガンマナイフ手術との使い分けが重要で、時には併用が必要となります。また、転移性脳腫瘍はできるだけ早急な治療が必要です。
【受診方法・手順】
-
1
現在、治療していただいている担当医にご相談の上、診療情報提供書とCT、MRIなどの病変の大きさ、部位が分かる画像をご用意ください。
-
2
電話で外来診察の予約をお取りください。必要に応じて担当医が電話で応対いたします。
ガンマナイフ担当医
脳神経外科 光田幸彦
-
3
至急手術が必要な方は、患者さんの担当医より直接ご連絡いただければ、1~2週間以内に手術を行えるよう対応いたします。
-
リニアック(VersaHD)による定位放射線治療を希望される方
我々は、リニアックは「放射線によるメス」と考えています。したがって、病変部に通常の手術を行ったと仮定した場合、治癒あるいは病状の好転が期待される患者さんがリニアックの良い適応となります。
手術と同様の治療効果が期待され、副作用、体の負担が少ないことより、ご高齢の方や併発する他の疾患のために通常の手術が難しいと思われる方にも治療が可能です。
病変が小さく(直径5.0㎝以下が望ましい)、限局している場合は1回~数回の照射で治療が完了するため、入院期間が短く、早期の社会復帰が期待されます。
また、1回の治療時間は20分~30分程度のため、通院医療も可能です。
【受診方法・手順】
-
1
現在、治療していただいている担当医にご相談の上、診療情報提供書とCT、MRIなどの病変の大きさ、部位が分かる画像をご用意ください。
-
2
電話で外来診察の予約をお取りください。必要に応じて担当医が電話で応対いたします。
頭頸部疾患担当医
脳神経外科 光田 幸彦
前立腺癌担当医
泌尿器科 喜久山 明
脊椎・脊髄疾患担当医
脳神経外科 光田 幸彦
整形外科 徳海 裕史
肝癌担当医
消化器内科 荒木 一郎
その他の疾患、疾患別担当医不在時の窓口
脳神経外科 光田 幸彦 → 放射線治療医・専門担当医